スケートボードは、アートだ。
なんていう風に表現されることをよく目にします。僕にとって、スケートボードがアートなのかどうかというのは、正直言って分かりません。まず、アートっていうのがなんなのか、実のところよく分かってないからです。
でも、アートの定義は分かりませんが、自分の心と行動の変化は分かります。
例えば、絵画、映画、音楽、ファッション、などを見た時に、
どうしても気になってじっと見ていたり聞いていたり、実際に手にとってみたり、どうしても欲しくなって購入したり。
という風に、それらを見る前と、見た後で、自分自身の行動が変わっているというのが、僕にとってのアートだったりします。
ということで、今回のコラムは、
スケボーのデッキにはどうして絵が描いてあるのか?という事を書こうと思います。
スケボーのデッキに描いてある絵を、一般的には、「グラフィック」と呼んでいます。スケボーのスライドトリックはデッキのグラフィック面を削る事になるので、ぶっちゃけた話、最終的には、グラフィックは、無くなっちゃう訳です。
ここで、とても面白い事が起きていることに気づきます。
デッキを選ぶ時に、「好きなグラフィックを選ぶ」という理由は、かなりメジャーで正当な理由です。あなたもお気に入りのグラフィックを見つけてデッキを購入した事がありますよね?
で、そのデッキを使ってスケートをして、上達すればするほど、楽しければ楽しいほど、グラフィックは削れて、なくなっていく。
なんという不条理。どこまでも不合理。スケーターは、気に入ったグラフィックを削ることが、スケートの楽しみという、面白い行動をしているんですね。
これは、スケートボードという文化を表す、分かりやすい行動のひとつではないでしょうか?
スケボーのグラフィックは、スケーターに削られてなくなる事で完成する「作品」なのかもしれません。
キレイなグラフィックも、有名アーティストの作品でも、遠慮は無用です。どんどん削ろう。
スケボーのデッキには、グラフィックがプリントされていない、ブランクデッキ、いわゆる無地デッキというのがあります。無地デッキは、グラフィックがプリントされていない分、価格が安くなっています。もちろん性能的に劣っているということはありません。
ですが、僕個人としては、無地デッキを買おうと思ったことは一度もありません。なので、当店Hi5 Skateboardingでは、無地デッキを取り扱っていませんし、今後も取り扱う予定はありません。
それは、無地デッキが商品としてダメだとか、僕が嫌いだとか、そういう理由ではなく、スケートボードカルチャーの中には、
グラフィックでデッキを選ぶ
というのが、価値のひとつとして確立されていて、その行動がとても楽しい事だと、僕自身が体感しているからです。
そして、スケボーの魅力は、「乗れる」「動く」という機能だけでは、説明出来ない部分にある事を伝えていきたいと思っているからです。
ただ「スケボーとして機能していれば良い」というスタイルも悪くありません。でも、それは、生きていくのに必要な栄養素だけを摂取しているような、3食カロリーメイトと水だけで生きているような、味気なさがあります。
スケボーの魅力は、「機能」だけにあるわけではありません。好きなブランドを選んでみたり、好きなスケーターで選んでみたり。無駄かもしれない雑多な要素が入り交じって、幅広く、奥深く楽しめる遊びです。
世のスケーターが全員、無地デッキに乗るようになったら、とても、つまらないと思いませんか?それは、毎日カロリーメイトを食べる世界かもしれません。
僕は、色んな料理を、様々な器で、楽しい仲間と食べる毎日を求めています。あなたはどう思いますか?
デッキ選びの時に、好きなブランド、好きなスケーター、好きなスタイル、という基準で選べるのは、知識もスキルも長けている上級者だけかもしれません。
これから、スケボーを始める人にとっては、どれを選んだら自分らしいのかなんて、全く分かりませんよね?だったら、「とりあえず乗れれば良いや」っていう理由で、無地デッキを選ぶのは、少し待って下さい。
Hi5がオススメするデッキ選びの方法は、2通りあります。
1つ目は、YouTubeやDVDで、スケボーの映像を出来るだけ沢山見てみて下さい。その中に、
「あ、こんな風に滑ってみたい!」
「この人カッコイイな。」
「こういうスタイルが自分らしいかも。」
と思ったブランド、スケーターのデッキを探してみて下さい。
そして、もうひとつのオススメの選び方が、「グラフィックで選ぶ」。
YouTubeやDVDの映像を見ていても、凄すぎて現実味がない。結局選べないよ、って時は、考えるのをやめて、実際にショップへ行ったり、インターネットで検索したりして、デッキのグラフィックを見てみましょう。スケートブランドやスケーターは、あなたの為に、スケボーのデッキのグラフィックを特別なモノにしてくれています。きっと「心が動く1枚」があるはずです。
映像を見て選んだデッキも、グラフィックで選んだデッキも、「機能」だけで選んだデッキではなく、あなたの「心が動いた」特別な1枚です。細かい事や難しい事は、分からなくても良い。でも、「何かを感じた」という理由があるだけで、これからのスケートライフが全く違うモノになります。
ブルース・リーが言いました。
Don’t think,Feel.(考えるんじゃない。感じるんだ。)